面白かった本2018
今年は39冊読みました。月に3冊くらいと平均すればまぁまぁな感じだけど、10月以降は月に1、2冊だったのでちょっと物足りないというところです。
まぁ、でもそんなことも言っても仕方ないので、今年読んで面白かった本を振り返ります。
中動態の世界

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2017/03/27
- メディア: 単行本
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人は自分の行動に対してどこまで責任を持つのか、また意志を持って選択したといえるのかということを、「動詞の態」をキーワードにして考察します。今年は仕事でもプライベートでも色々なことがあり、自分の人生をどこまで自分は選択しているのか考えることがよくありました。そんなこともあって本書は興味深く読めた。言語学に馴染みがなく新鮮味があったのもよかった。
空飛ぶ馬
初めて読んだ北村薫。たまたまのきっかけで読んだけど、今年になって円紫さんシリーズに新作が出たのは少し運命的。ただ、普段ミステリーを読まないせいもあってか、続編を読むうちに興味が薄らいでしまった。円紫さんシリーズは日常パートは面白いけど、メイン(?)の推理パートがあわなかった。そもそもミステリーものは謎が気になって物語に入っていけない感じが好きではないのです。
でも今年読んだ数少ない小説ということであげました。主人公と友達の会話が好き。
社員をサーフィンに行かせよう

新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて
- 作者: イヴォン・シュイナード,井口耕二
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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アウトドアメーカーであるパタゴニアの創設者の仕事観・生き方を綴った本。エコロジーの発想に漠然と関心を持っていたのが本書で形を与えられたと思う。
ぼくは猟師になった
今年読んだ本で人に勧めるならこれです。多くの人には馴染みのないであろう世界である猟師に関する本で、猟師になるまで・なってからの自伝的なもの。広い意味でエコロジーの本としても読めるし、青春ものとしても面白い。上記のパタゴニア本とこれがコンボで効きました。自分で食べる肉は自分で獲るんだよなぁ。
ゲンロン0 観光客の哲学
紀伊國屋じんぶん大賞2018は『中動態の世界』とこれがワンツーでした。 どっちも甲乙つけがたく面白かったです。「観光客」「誤配」をキーワードに、現代の対立・分断を煽る動きに異議を唱えます。「郵便的マルチチュード」とか。読みやすい哲学書なのでこちらもオススメしたい。「ゲンロン・シリーズ」は読了していないけど幾つか買ってます。東浩紀は人間的にも面白い人なのでこれからも応援していていきたい。
終わりに
ということで5冊をあげました。来年は冊数が少なくてもいいから骨のある本をじっくり読みたいと思っています。小説を読むのは少なくなるだろうけど全く読まないのは避けたい...。いい年になりますように!
図書館と夏の昼下がり
夏が終わったので思い出を一つ。
夏休みの帰省中、地元の中央図書館に行きました。高校生の時は本を読んだり、近くの公園を散歩したり、ウダウダしたり、受験勉強にも使った思い出の場所で、帰省して時間があるとよく訪れる。実家から電車を使わないといけない距離だけど、見るもの全部が懐かしいから苦にならない。
中央図書館というだけあって、市の歴史資料コーナーがあります。1フロアを使っているからそれなりに規模も大きくて、区ごとの歴史をまとめた資料や、市に所縁のある作家の作品、市で起きた事件に関する本などが置いてある。自分の暮らした区の資料を見ると地名や川の名前の由来を知ったりできて、なかなか面白い。学校が寄贈したと思われる◯周年記念史なんかは普段はお目にかかれない資料だし、図書館で地域の資料を集めておくのは大事だなぁとあらためて思った。
やっぱりというか、利用者は年配の方が多い。街の歴史を通して自分のことを考えているのだろうか。一般書籍がある1階のざわめきもここにはないし、ガラス越しに眩しい日差しを感じながらクーラーの効いた地元の図書館で昼下がりを過ごすのは、とても贅沢な時間の過ごし方だと思った。
休憩がてら食堂でサンドイッチを食べ、クリームソーダを飲んだ。これも実にいい感じだった。来年の夏も行こうと思う。
ラップはなぜ面白いか
31歳でラッパーになることを宣言した方が話題になっていました。
2年くらい前からラップにはまっています。9月には初めてラッパーのライブに行くことになりました。いい機会なので、私にとってのラップの魅力を紹介します。とりあえず日本語ラップの話。
1.個人がゆるくつながっている
ラッパーは基本的に一人で活動しています。チームもあるし、歌う人とビートを作る人が違ったりもしますが、基本的に"個"が基本単位だと思っています。協力する時も友達つながりだったりして、個人が付かず離れず集まって楽しんでいる感じが好きです。「あいつとあいつがタッグを組んだ!」みたいなのが面白い。自由な感じがいいと思う。紹介するのはKID FRESINOとC.O.S.Aの曲で、プロデュースはjjj。
C.O.S.A. × KID FRESINO "LOVE Prod by jjj"
2.基本的にカッコつけている
ラッパーはカッコつけが多いと思います。刺青したりいい車に乗ったり、モテそうなことをあからさまにしている。↓とか、カッコつけまくりで好きです。
KOHH "Glowing Up" Feat. J $tash (WSHH Exclusive - Official Music Video)
あと、名前のつけ方も面白いです。KID FRESINOとかMony Horseとか、明らかにカッコつけている。上のjjjもすごいと思う。自分に名前をつけるときに、絶対"jjj"なんて思いつかない。なんというか、キャラクターっぽいところに面白さを感じている。「Mr.Childrenの桜井和寿」とか、普通じゃないですか。日本人がバンドやってるんだなぁくらいの印象しかない(別にそれで全然いいんだけど)。「いや、おれはjjjだから」と言い切ってしまうところが、私にない価値観だったのですごく好きです。実際かっこいい名前かどうかは関係なくて、胸を張ってかっこつけてることがかっこいい。
3.サンプリング文化
既存の曲の一部を加工して作るトラックは元ネタを楽しむこともできます。例えば上の『LOVE』の元ネタは以下で紹介されています。聞くと「おお!」となる。曲の気に入ったところだけグルグル使うというのも面白い。カレーばっかり食べてる感じ。
C.O.S.A. × KID FRESINO / LOVE Prod by jjj|Spincoaster (スピンコースター) | 心が震える音楽との出逢いを
4.ループミュージック
ラップはフォークに似ていると思う。吉田拓郎の『イメージの詩』とか好きなんだけど、同じメロディをぐるぐる回して、言葉を楽しむ感じが似ている(ラップはフックがあるけど、それはそれとして)。自分はフォークが好きだから、これに気づいたときにラップに親近感を持った。
ということで、ラップは面白い。1枚お勧めするなら、少し古いけどPSGの『David』。ブイブイ系じゃなくてどっちかというと文化系なので聴きやすいと思う。3人グループで、それぞれの個性があるのでラップを知るのにいいはず。

- アーティスト: PSG,Bach Logic
- 出版社/メーカー: ファイルレコード
- 発売日: 2009/10/09
- メディア: CD
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9月に行くのは5lackのライブ。PSGのS。
アニメのタイトルが思い出せない
定期的に(半年に1回くらい)思い出すことがある。それは子供の頃(90年代。リアルタイムかは不明)に見たアニメのタイトルが思い出せないということだ。思い出せないことを思い出すというのも変な話だけど、ストーリーはというと、たしか主人公は男のと女の子の2人で(外国人?)、昨日の雨に降られたせいで、朝起きると体が縮んでしまう。友達のモンスター数体も体が縮んでいる。実は雨ではなくて、悪の組織(おっさん)が工場で作った「体縮み雨」が原因で、子供たちが工場を破壊するとかいう筋だった気がする。
悪のおっさんの台詞「〜って寸法よぉ」が印象的だった。
定期的に「雨 体 縮む アニメ」とかで検索するけどコナンとメルモちゃんがヒットするばかり。家族にも聞こうと思うけど、瓶に手紙を詰めて海に流す気分でここに記しておきます。もしご存知の方がいたら教えてください。
追加:たしか一話だけのアニメです。30分かもしれないし1時間かもしれない......。
今週のお題「好きなアイス」
今週のお題「好きなアイス」
今週のお題に初めて参加します。好きなアイスはアイスボックスである。ノーマルのグレープフルーツ味が好き。少し前、仕事帰りに食べたらすごく夏を感じたなぁ。炭酸ジュースを入れたら美味しいようだけどまだ試していない。アイスボックスはかなり斬新なアイスだと思う。ラーメンだとエースコックのワンタン麺のポジションではなかろうか。
......と、アイスボックスについて初めてネットで調べてみたら、公式ページで誕生秘話を漫画で紹介していた。89年に発売かー。漫画のタッチもイイネ。
どちらかというとアイスクリームよりアイスキャンデーが好き。ガリガリ君コーラ味を中学生の時に食べて、あれも感動したな。かき氷は抹茶味とかゴージャスなやつより、チープなシロップをかけたのが好き。イチゴとレモン味がお気に入り。
鯨とか捕鯨とか、文化について
捕鯨に関する本を読んだ。
この本を読むまで捕鯨に関する知識はほぼなかったといっていい。得た知識をまとめると、
- 捕鯨には調査捕鯨と商業捕鯨がある。
- 日本は調査捕鯨で得た鯨を販売している(調査が終わって潰した肉、という建前?)
- 公海で調査捕鯨をしているのは日本だけである。捕獲数は世界一である。
- 日本の調査捕鯨は科学的でないと国際社会から批判がでている。調査捕鯨をあらためるのであれば沿岸捕鯨(商業捕鯨の一つで日本が伝統的に行っていた捕鯨)を認めてもらえる余地があるのに、日本はそれを受け入れていない。ちなみに現在の調査捕鯨の方法は日本の伝統的な捕鯨方法(網取り式捕鯨)ではない。また、日本で伝統的に捕鯨をしていた地域はわずかである。全国的によく食べていたのも戦後の一時期。
- 上記の経緯があってオーストラリアが国際裁判所に訴えた。
- 2014年に国際裁判所から上記の調査捕鯨に違法判決が出た。
- 日本は新たな調査捕鯨プロジェクトを行っている。
著者は日本の捕鯨のあり方に反対的な書き方をしている。他の捕鯨に関する本(賛成的な論調)を読んでいないので、このブログの感想はフェアじゃないかもしれないけど、事実を積み上げていくと反対になるしかないと思う。
どうやら日本の鯨文化として歴史的に脈々と続くものはごく一部なようだ。しかもそれらは調査捕鯨の方法(ノルウェー式)でない。上記リスト4にあるとおり、調査捕鯨をあらためることで伝統的な沿岸捕鯨ができるようになれば、本来の日本の鯨文化を守る可能性があるわけだ。大きなくくりで「捕鯨は日本の文化だ」といってしまうと、論点が曖昧になってしまう(というか意図的に曖昧にしている?)。
「調査捕鯨は日本の文化を守るためではない」
「沿岸捕鯨の敵は、IWC(国際捕鯨委員会)ではなく国(日本政府)だと思えてならない」
p7
文化という主張は強くて、批判するのが難しい。この本で興味深かった一つに「「文化」の政治学」という章がある。「文化化」されてしまうとそれが高尚なイメージを持ってしまい、文化になった経緯を飛び越えてしまう。そして本当にそれが文化なのか、という問いを封じてしまう危険性があるというのだ。これはたしかになるほどと思える。とくに現代は多様性の時代なので、文化を批判すると抑圧する帝国主義者みたいなレッテルを貼られてしまいそうである。批判ができない社会はよくないです。
最近はニホンウナギの問題もあるし、鯨も保護しようという意見はわりと受け入れやすくなるかもしれない。ちなみに鯨を保護する理由だけど、鯨は一個体が子供を産む数が少ないので(人間と同じ)、たくさん獲ってしまうと適正な数にが戻るのが大変だからだそうだ。当たり前と言えば当たり前の話ですね。たまに「鯨やイルカは頭がいいから殺すのはかわいそう」という意見が聞こえてきて、それってどうなの?という気がしてたけど、上記の理由なら納得できる。
もう一つ気になった話として、国際法とか法の解釈についてをあげておこう。国際裁判所での審議はIWC(国際捕鯨委員会)の条約とか国際法の解釈が焦点の一つになるんだけど、法律・条約を色々と解釈できてしまうのはどうなんでしょうね。まぁ一国内でも法の解釈で揉めるわけだから、国際法にいたってはもっと難しいのだろうけど......。
最後に、これは捕鯨の話とは関係ないけど面白かったところ。国際裁判所での審議の場で、イギリスの弁護士はモーツァルト風のかつらをかぶっていたそうだ。イギリスの法廷では伝統的ということだそう。写真も載っていて、本当にモーツァルトみたいである。なんというか、人間は物語を大事にしている生き物なんだなぁと思ってしまった。
ということで捕鯨の諸問題を理解できてよかったです。ここには書かなかったけど今後の対策も提起されています。わりとお勧めしたい本なのでよかったら読んでみてください。
パタゴニアとか環境とか
企業が責任を負う相手は、本当のところ、だれなのか。顧客か。株主か、社員か。
そのどれでもないと我々は考えている。企業は、本来、資源の基盤に責任を負うものである。
健全な環境がなければ、株主も社員も顧客も存在し得ないし、企業も存在し得ないからだ。
-2004年にパタゴニアが展開したシリーズ広告より
p250
パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードの書いた『新版 社員をサーフィンに行かせよう』を読みました。

新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて
- 作者: イヴォン・シュイナード,井口耕二
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2017/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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10年前に出たものに加筆したということで、私は旧版は未読です。企業経営とかの方面で話題だったらしいけど、今回はたまたま手に取りました。
パタゴニアの商品は買ったことがなくて、この本を読む前に私が持っていたパタゴニアの知識は①アウトドアのブランド、②わりと高い、③おしゃれ、④環境に関心が高い。例えば商品を袋に入れずに渡される、⑤シーシェパードを支援している(していた)、くらいです。最後のでちょっとウーンという感じではあったのですが、まぁその程度の知識でした。
で、本の内容です。パタゴニアの歴史と理念の2部構成になっていて、創業者の自伝要素もある歴史編の方が面白かった。経営者の視点だと理念編の方が面白いかもしれない。
イヴォンは川の水を飲んだり(体調を崩すことはめったにない。サケが死んでる川は例外とする)、浅い川に頭から飛び込んで骨折したり、なかなワイルドな男です。フライフィッシングやクライミングやサーフィンの好きなアウトドア・マンで、自分の欲しい道具を作り、あとは遊べるだけのお金があればそれでいいやというスタンスだったのですが、自分たちの作った道具が自然に悪影響を与えていることを知ったことで、パタゴニアは試行錯誤が始まるのでした。
楽しく仕事をしてはならない理由などありませんし、楽しみを否定することもありません。楽しみ方なら、いまも、みな、わかっています。でも楽しみの種類はいままでと違うはずです。片目をちょっと違うほうに向け、頭を少し垂らしつつ、楽しむことになるはずです。
p116
今回初めて知ったのですが、パタゴニアは株式を公開していないそう。外野からヤイヤイ言われないようにして、自分たちの信じることを行動に移せる環境を作っているということで、そういうのって感心します。利益の1%を環境保護団体に寄附したり、オーガニックコットンを使ったり、パタゴニアの環境への取り組みについて、欺瞞とか偽善とか、西洋の価値観に基づいた正義感云々で快く思わない人がいるのも知っています。地球のことを考えるなら、そもそもアウトドアするなとか服もずっと同じもの着ろって言う人もいるかもしれない。シーシェパードの件もたしかにどうかと思います。でも、やっぱり参考にすべきところはいっぱいあるはずで、いくつか欠点があるからといって全て否定するのはどうかと思います。長所もなければ欠点もない(目立たない)企業より、よっぽど人間味があるなぁなんて思います。まぁこれは私に当事者意識がないから呑気ことを言ってるだけかもしれない。でも当事者意識のない意見も一つの意見としてあっていいんじゃないかな...。
いずれによ、少なくとも私は本書を読むことでこれまで以上に環境について考えるようになりました。環境保護団体について少し調べようと思います。続くかも。
おまけ:
この本を読んでいて『ピューと吹く!ジャガー』という漫画で環境について調べる話を思い出しました。環境汚染が進んで地球が滅びるみたいなストーリーは人間本位な考えで、環境汚染によって地球より人間の方が先に滅ぶよ、死にたくなければエコしようみたい締めが斬新で当時は関心しました。