kiligihiii’s diary

ぼくは十分に速くあったろうか

ユリシーズの予習2:オデュッセイアを読もう

前回の続きです。

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ユリシーズ』は『オデュッセイア』を下敷きに描かれていて、登場人物もそれぞれ対応がある。例えばブルームはオデュッセウスだし、妻モリーはペネロペイア、スティーヴンはテレマコス、と言った具合。『ユリシーズ』の各章(「挿話」と書かれていることが多い)の名前が『オデュッセウス』の人物名とかになっているので、読んでいると「お!これがあれか!」といった楽しさがあった。「元ネタを掘る」という感じである。

オデュッセイア』は『イーリアス』で描かれたトロイア戦争後の話で、オデュッセウスが故郷のイタケに戻るまでの冒険譚である。今回読んだ『ホメーロスオデュッセイア物語』では、出発から帰還までを時系列に沿って再構成されており読みやすかった。

話を盛り上げるため仕方のない展開かもしれないが、オデュッセウスの部下が、ところどころオデュッセウスが禁じることをやって問題が起こる。帰還が送れるのも部下のせいである。また帰還までに何年も時間がかかっているのだが、キルケやカリュプソの元に年単位で滞在していたりと、時間感覚がずれているのはご愛嬌と解釈すればいいのだろうか。まぁ一つ目巨人で魔女やポセイドンや冥界が出てくる世界観に何をっても無駄だけど。

キルケがオデュッセウスの部下を豚に変えるシーンがあるのだけど、これは『千と千尋の神隠し』のヒントになったのだろうか。ナウシカアは『風の谷ナウシカ』だろうし、宮崎駿は『オデュッセイア』が好きなのかも。

第2部はイタケにいるテレマコスが主人公となる。twitterでもつぶやいたけど、これがドラクエ5っぽい。というかドラクエが影響受けていると考えるのが自然ですね。
自分はドラクエ5が好きなので、この視点が変わる構成は好みであった。テレマコス可愛いぞ。

各章で色んなキャラが出てくるし、ロードムービなので読んでいて面白い。『イーリアス』よりオススメです。ジョイスがワクワクしながら読んだのもわかる気がする。

イーリアス』と『オデュッセイア』はホメロスが一人で作ったのかは議論の分かれるところだそうで、それも含めてこの2つの物語の成立過程を知りたくて『ホメーロスの英雄叙事詩』を読んだ。前半のギリシャ時代の成立過程や地理的解説は正直わかりにくい。写真や図のある資料集的なもので整理したほうがいいと思う。それでも新書でコンパクトにまとめっているの読んで損はなかった。1966年に出版されているけど、それ以降に新書という形式でホメロス本が出ていないのはちょっと残念な気がする(多分)。けど需要がないのかな。。。
叙事詩」という形式、自分にはまだ見知らぬ世界が広がっていることを知れた。

ホメーロスの英雄叙事詩 (岩波新書)

ホメーロスの英雄叙事詩 (岩波新書)

 

 

細かいけど気になったところは、「〜のぐるりに」という表現が多いところである。これは自分だけへのメモ。

ユリシーズの予習1:イーリアスを読もう

久々の更新は久々に読んだ小説のことを書く。『ホメーロスイーリアス物語』と『ホメーロスオデュッセイア物語』を読んだ。

ホメーロスの イーリアス物語 (岩波少年文庫)

ホメーロスの イーリアス物語 (岩波少年文庫)

 
ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)

ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)

 

叙事詩を読みやすく再構成したものだから、厳密には「小説」ではないけど、それはさておき。なんでこれらを読んだかというと、『ユリシーズ』を再読する前に、下敷きとなった『オデュッセイア』とその前編『イーリアス』が読むことで、『ユリシーズ』をより楽しもうと思ったためだ。ただ、叙事詩という形式に慣れていなくて諦めた経緯があったから、再話された本書を読みたかったのだが、絶版になっていて、すっかり諦めていたら岩波少年文庫として再販されたのである。

気づけば買ってから数年が経っていた。

ですので、あくまで今回の感想は「岩波少年文庫版」のものです。あしからず。それではどうぞ。

まずは『イーリアス』。トロイア戦争が舞台で、ギリシャ側はリーダーのアガメムノーンの他に、弟のミネラオース、アキレウス、智将オデュッセウス等。対してトロイア側はリーダーのヘクトールとその父プリアモス、弟のパリス等。どちらかというとギリシャ側の方が魅力的な人物が多い。アキレウスの母親は海の女神テティスである。そういう世界観である。

トロイア戦争の原因を書いておくと、パリスがミネラーオスの妻ヘレネーを寝とったというどうしようもないものである。そのせいで10年以上の攻防が繰り広げられ、多くの命が失われた。

神様はそれぞれギリシャ側、トロイア側について応援する。神様は理解不能な絶対的な存在というより、どこか憎めない、愛嬌を持った存在として受け取れた。でも登場人物は神々へ頭が上がらないようで、自分の行動や運命も神様が決めたから仕方ないよね、といった感じである。どこのシーンだか忘れてしまったけど、自分のよくない行動について「まぁでもあれは神が俺に指示したから」みたいなところがあった。これが「中動態の世界」というやつだろうか。

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
 

 
最初の方はギリシャが攻めたら次はトロイアが攻めて、という展開が繰り返されて面白みに欠けるところがあったけど、パトロクスが活躍するあたりから物語に勢いが出てきて思った以上に楽しく読めた。とくにアキレウスプリアモス王との対話のシーンはグッとくるものがあった。

あと、自分は『ユリシーズ』を読むことが念頭にあったから、オデュッセウスの振る舞いを気にしながら読んでいた。武力と知力を兼ね備えた存在として描かれていて、その冷静さがある意味で、オデュッセウスが浮いた存在のようにも感じられた。

 

『オデゥッセイア』については、後ほど。

面白かった本2018

今年は39冊読みました。月に3冊くらいと平均すればまぁまぁな感じだけど、10月以降は月に1、2冊だったのでちょっと物足りないというところです。
まぁ、でもそんなことも言っても仕方ないので、今年読んで面白かった本を振り返ります。

中動態の世界 

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)
 

人は自分の行動に対してどこまで責任を持つのか、また意志を持って選択したといえるのかということを、「動詞の態」をキーワードにして考察します。今年は仕事でもプライベートでも色々なことがあり、自分の人生をどこまで自分は選択しているのか考えることがよくありました。そんなこともあって本書は興味深く読めた。言語学に馴染みがなく新鮮味があったのもよかった。

空飛ぶ馬 

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 

初めて読んだ北村薫。たまたまのきっかけで読んだけど、今年になって円紫さんシリーズに新作が出たのは少し運命的。ただ、普段ミステリーを読まないせいもあってか、続編を読むうちに興味が薄らいでしまった。円紫さんシリーズは日常パートは面白いけど、メイン(?)の推理パートがあわなかった。そもそもミステリーものは謎が気になって物語に入っていけない感じが好きではないのです。
でも今年読んだ数少ない小説ということであげました。主人公と友達の会話が好き。

社員をサーフィンに行かせよう

新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて

新版 社員をサーフィンに行かせよう―――パタゴニア経営のすべて

 

アウトドアメーカーであるパタゴニアの創設者の仕事観・生き方を綴った本。エコロジーの発想に漠然と関心を持っていたのが本書で形を与えられたと思う。

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ぼくは猟師になった 

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

ぼくは猟師になった (新潮文庫)

 

今年読んだ本で人に勧めるならこれです。多くの人には馴染みのないであろう世界である猟師に関する本で、猟師になるまで・なってからの自伝的なもの。広い意味でエコロジーの本としても読めるし、青春ものとしても面白い。上記パタゴニア本とこれがコンボで効きました。自分で食べる肉は自分で獲るんだよなぁ。

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

ゲンロン0 観光客の哲学

 

紀伊國屋じんぶん大賞2018は『中動態の世界』とこれがワンツーでした。 どっちも甲乙つけがたく面白かったです。「観光客」「誤配」をキーワードに、現代の対立・分断を煽る動きに異議を唱えます。「郵便的マルチチュード」とか。読みやすい哲学書なのでこちらもオススメしたい。「ゲンロン・シリーズ」は読了していないけど幾つか買ってます。東浩紀は人間的にも面白い人なのでこれからも応援していていきたい。

 

終わりに 

ということで5冊をあげました。来年は冊数が少なくてもいいから骨のある本をじっくり読みたいと思っています。小説を読むのは少なくなるだろうけど全く読まないのは避けたい...。いい年になりますように!

図書館と夏の昼下がり

夏が終わったので思い出を一つ。

夏休みの帰省中、地元の中央図書館に行きました。高校生の時は本を読んだり、近くの公園を散歩したり、ウダウダしたり、受験勉強にも使った思い出の場所で、帰省して時間があるとよく訪れる。実家から電車を使わないといけない距離だけど、見るもの全部が懐かしいから苦にならない。

中央図書館というだけあって、市の歴史資料コーナーがあります。1フロアを使っているからそれなりに規模も大きくて、区ごとの歴史をまとめた資料や、市に所縁のある作家の作品、市で起きた事件に関する本などが置いてある。自分の暮らした区の資料を見ると地名や川の名前の由来を知ったりできて、なかなか面白い。学校が寄贈したと思われる◯周年記念史なんかは普段はお目にかかれない資料だし、図書館で地域の資料を集めておくのは大事だなぁとあらためて思った。

やっぱりというか、利用者は年配の方が多い。街の歴史を通して自分のことを考えているのだろうか。一般書籍がある1階のざわめきもここにはないし、ガラス越しに眩しい日差しを感じながらクーラーの効いた地元の図書館で昼下がりを過ごすのは、とても贅沢な時間の過ごし方だと思った。

休憩がてら食堂でサンドイッチを食べ、クリームソーダを飲んだ。これも実にいい感じだった。来年の夏も行こうと思う。

アニメのタイトルが思い出せない

定期的に(半年に1回くらい)思い出すことがある。それは子供の頃(90年代。リアルタイムかは不明)に見たアニメのタイトルが思い出せないということだ。思い出せないことを思い出すというのも変な話だけど、ストーリーはというと、たしか主人公は男のと女の子の2人で(外国人?)、昨日の雨に降られたせいで、朝起きると体が縮んでしまう。友達のモンスター数体も体が縮んでいる。実は雨ではなくて、悪の組織(おっさん)が工場で作った「体縮み雨」が原因で、子供たちが工場を破壊するとかいう筋だった気がする。

悪のおっさんの台詞「〜って寸法よぉ」が印象的だった。

定期的に「雨 体 縮む アニメ」とかで検索するけどコナンとメルモちゃんがヒットするばかり。家族にも聞こうと思うけど、瓶に手紙を詰めて海に流す気分でここに記しておきます。もしご存知の方がいたら教えてください。

 

 追加:たしか一話だけのアニメです。30分かもしれないし1時間かもしれない......。

今週のお題「好きなアイス」

今週のお題「好きなアイス」

今週のお題に初めて参加します。好きなアイスはアイスボックスである。ノーマルのグレープフルーツ味が好き。少し前、仕事帰りに食べたらすごく夏を感じたなぁ。炭酸ジュースを入れたら美味しいようだけどまだ試していない。アイスボックスはかなり斬新なアイスだと思う。ラーメンだとエースコックのワンタン麺のポジションではなかろうか。
......と、アイスボックスについて初めてネットで調べてみたら、公式ページで誕生秘話を漫画で紹介していた。89年に発売かー。漫画のタッチもイイネ。

www.morinaga.co.jp


どちらかというとアイスクリームよりアイスキャンデーが好き。ガリガリ君コーラ味を中学生の時に食べて、あれも感動したな。かき氷は抹茶味とかゴージャスなやつより、チープなシロップをかけたのが好き。イチゴとレモン味がお気に入り。

鯨とか捕鯨とか、文化について

捕鯨に関する本を読んだ。

クジラコンプレックス:捕鯨裁判の勝者はだれか

クジラコンプレックス:捕鯨裁判の勝者はだれか

 

 この本を読むまで捕鯨に関する知識はほぼなかったといっていい。得た知識をまとめると、

  1. 捕鯨には調査捕鯨商業捕鯨がある。
  2. 日本は調査捕鯨で得た鯨を販売している(調査が終わって潰した肉、という建前?)
  3. 公海で調査捕鯨をしているのは日本だけである。捕獲数は世界一である。
  4. 日本の調査捕鯨は科学的でないと国際社会から批判がでている。調査捕鯨をあらためるのであれば沿岸捕鯨商業捕鯨の一つで日本が伝統的に行っていた捕鯨)を認めてもらえる余地があるのに、日本はそれを受け入れていない。ちなみに現在の調査捕鯨の方法は日本の伝統的な捕鯨方法(網取り式捕鯨)ではない。また、日本で伝統的に捕鯨をしていた地域はわずかである。全国的によく食べていたのも戦後の一時期。
  5. 上記の経緯があってオーストラリアが国際裁判所に訴えた。
  6. 2014年に国際裁判所から上記の調査捕鯨に違法判決が出た。
  7. 日本は新たな調査捕鯨プロジェクトを行っている。

著者は日本の捕鯨のあり方に反対的な書き方をしている。他の捕鯨に関する本(賛成的な論調)を読んでいないので、このブログの感想はフェアじゃないかもしれないけど、事実を積み上げていくと反対になるしかないと思う。

どうやら日本の鯨文化として歴史的に脈々と続くものはごく一部なようだ。しかもそれらは調査捕鯨の方法(ノルウェー式)でない。上記リスト4にあるとおり、調査捕鯨をあらためることで伝統的な沿岸捕鯨ができるようになれば、本来の日本の鯨文化を守る可能性があるわけだ。大きなくくりで「捕鯨は日本の文化だ」といってしまうと、論点が曖昧になってしまう(というか意図的に曖昧にしている?)。

「調査捕鯨は日本の文化を守るためではない」
「沿岸捕鯨の敵は、IWC国際捕鯨委員会)ではなく国(日本政府)だと思えてならない」
p7

文化という主張は強くて、批判するのが難しい。この本で興味深かった一つに「「文化」の政治学」という章がある。「文化化」されてしまうとそれが高尚なイメージを持ってしまい、文化になった経緯を飛び越えてしまう。そして本当にそれが文化なのか、という問いを封じてしまう危険性があるというのだ。これはたしかになるほどと思える。とくに現代は多様性の時代なので、文化を批判すると抑圧する帝国主義者みたいなレッテルを貼られてしまいそうである。批判ができない社会はよくないです。
最近はニホンウナギの問題もあるし、鯨も保護しようという意見はわりと受け入れやすくなるかもしれない。ちなみに鯨を保護する理由だけど、鯨は一個体が子供を産む数が少ないので(人間と同じ)、たくさん獲ってしまうと適正な数にが戻るのが大変だからだそうだ。当たり前と言えば当たり前の話ですね。たまに「鯨やイルカは頭がいいから殺すのはかわいそう」という意見が聞こえてきて、それってどうなの?という気がしてたけど、上記の理由なら納得できる。

もう一つ気になった話として、国際法とか法の解釈についてをあげておこう。国際裁判所での審議はIWC国際捕鯨委員会)の条約とか国際法の解釈が焦点の一つになるんだけど、法律・条約を色々と解釈できてしまうのはどうなんでしょうね。まぁ一国内でも法の解釈で揉めるわけだから、国際法にいたってはもっと難しいのだろうけど......。

最後に、これは捕鯨の話とは関係ないけど面白かったところ。国際裁判所での審議の場で、イギリスの弁護士はモーツァルト風のかつらをかぶっていたそうだ。イギリスの法廷では伝統的ということだそう。写真も載っていて、本当にモーツァルトみたいである。なんというか、人間は物語を大事にしている生き物なんだなぁと思ってしまった。

ということで捕鯨の諸問題を理解できてよかったです。ここには書かなかったけど今後の対策も提起されています。わりとお勧めしたい本なのでよかったら読んでみてください。